\歴史と雑学/
果物と野菜に関するなるほどがいっぱい #:119 2011.05.02更新
炭火焼きはなぜおいしい?
人が炭を使い始めたのは石器時代初期、火の起源と同じ頃だと考えられ、当時の遺跡から炭が発掘されています。スイッチ一つで火がつくガスや電気のコンロが普及した現代でも、炭火焼きは大人気。野外で楽しむバーベキューなどに使われるだけでなく、昔ながらの焼き鳥やうなぎの蒲焼きをはじめ、最近では炭焼きのハンバーグや、シーフードを七輪で炭火焼きする専門店なども増えてます。食通をひきつける炭火焼きのおいしさの秘密を探ってみましょう。
炭火から放射される遠赤外線の効果とは?
炭は木を蒸し焼きにしたもので、主成分は炭素です。この炭素が酸素と結びついて燃え、300℃以上の高温になります。炭火の最大の特徴は、このときにガスの火の約4倍もの量の赤外線を放射することで、このうちの多くが遠赤外線です。遠赤外線は、光をプリズムで分解したときに赤色の外側にある光です。波長が長く、目で見ることはできないのですが、物体に当たるとそこで熱を発生させます。ガスの火は素材との間の空気を温めて、その熱で加熱しますが、炭火焼きの場合は光である遠赤外線が素材に直接届くので、短時間で高温になり、効率よく加熱できるのです。
魚や肉は遠赤外線でおいしくなる
魚や肉の炭火焼きの人気が高いのには、さらに科学的な理由があります。魚や肉のタンパク質は、約90℃以上になるとかたく焼き締まり、うまみのある肉汁が絞り出されるようにして失われてしまいます。タンパク質に火を通すには、加熱温度は85℃くらいで充分です。とはいえ、低温で焼くと焼き上がるまでに時間がかかってしまい、その間にうまみは逃げ出してしまいます。その点、炭火で焼くと、遠赤外線が表面のタンパク質を高温で焼き固めるので、肉汁は中に閉じ込められます。さらに、その熱がほどよく中に伝わるので、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中はふんわりと焼き上がり、うまみもキープされるのです。
また、落ちた焼き汁が炭に当たって煙が立ちのぼり、煙でいぶすような風味も加わります。こんな作用が炭火焼き料理のおいしさにつながっているのです。
炭火焼きのコツは遠火でじっくり
炭火でおいしく焼き上げるには、炭火と材料の距離がポイントです。ガスや電気で加熱するなら、スイッチで火力を加減できますが、炭火は火がついたら強火が続くので、素材との距離が近すぎると焦げてしまいます。そこで昔から言われているのが「遠火の強火」。ほどよく遠火にして火力を調整しましょう。また、炭は中央を少なめに、まわりは多めに並べるのもコツ。火力は中央に集まるので、このほうが火力が均一になります。
ご家庭でのバーベキューや、七輪で魚を焼くときも、こんなコツを知っておくと、炭火焼きをもっとおいしく楽しめます。