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からだによいこと、つづけて元気に #:106 2010.10.19更新
フルーツジャムの歴史 とろみのもとクエン酸は料理にも相性抜群
ジャムの歴史はたいへん古く、スペインの旧石器時代の遺跡からは果物を土器で煮た跡が発見されています。そんな大昔から、季節のフルーツを1年を通して利用する保存の方法として現在まで伝えられてきたのです。とくにパン食が中心の欧米ではジャムの存在は大きく、家庭で手作りしたジャムはパンに欠かせないおふくろの味でした。日本でいえばご飯と漬物のような関係でしょうか。ジャム(JAM)はもともと「押しつぶす」「詰め込む」といった意味ですが、ただ「押しつぶす」だけでは独特のとろみは出ません。なぜフルーツがゼリー状に変身するのか、保存性が高まるのかなど、ジャムの不思議を探ってみましょう。
とろみの不思議
ジャムのとろみのもとは、フルーツに含まれるペクチンです。ペクチンとは細胞と細胞を結合している多糖類で、水溶性食物繊維の一種です。このペクチンがとろとろに変身するには、「加熱」「砂糖」「酸」の3つの条件が必要です。ペクチンは加熱すると溶け始めますが、このとき砂糖は持ち前の吸水性を発揮して、ペクチンの水分を吸収して抱え込みます。するとペクチンの組織が編み目状に変化し、ゼリー状になるのです。このゼリー化現象は、酸が一緒にあるほどよく進みます。
このゼリー化を進めるペクチンや酸の含有量はフルーツによって違います。ですから、フルーツによっては足りない成分を上手に補うのがコツです。ペクチンが少ないキウィフルーツや桃は市販の粉末ペクチンを、酸が少ないいちごやりんごは、レモン汁やクエン酸で酸を補うととろりとなめらかなジャムに仕上がります。
保存性の不思議
「最古の保存食」ともいわれるジャムですが、その保存性の秘密は砂糖にあります。腐敗を招く細菌やカビが繁殖するには一定の水分が必要です。ところが、ジャムに大量に含まれる砂糖がフルーツの水分を抱え込んでしまうので、腐敗菌は繁殖に必要な水分を得られなくなります。従って、砂糖の含有率が高いほど腐敗菌は増えず、保存性が高くなるのです。焼き菓子やお汁粉などの手作りスイーツも、砂糖の量が多いほど日持ちするのは、この砂糖の保水性のためです。ジャムの場合は砂糖の含有率が60~65%以上だと腐敗菌の繁殖をかなり抑えられます。砂糖の量を控えて手作りする場合は早めに使い切るようにしましょう。
使い方の不思議
パンやヨーグルトに添えたり、お菓子作りに使うことが多いフルーツジャムですが、じつは肉料理との相性もよいことをご存じでしょうか。例えば、イギリスやアメリカではローストターキーにクランベリージャムを添えるのが定番。スウェーデンには、ミートボールにリンゴンベリー(コケモモの一種)のジャムを付けて食べる名物料理があります。
意外な相性の良さの秘密は、フルーツ由来の甘味と酸味にあります。肉料理の塩味や旨味をバランスよく引き立てる効果があるのです。例えば、焼き肉のたれや炒めだれ、煮込み料理などに砂糖の代わりにジャムを加えれば、まろやかな甘味でコクのある仕上がりに。また、フルーツジャムに豊富な果糖は冷めるとよりおいしく感じるので、お弁当のおかず作りにも活用したいですね。さらに、酸味のもとであるクエン酸などの有機酸には、肉の脂っこさを抑える働きがあり、料理をさっぱりと仕上げてくれます。フルーツジャムの不思議な力を毎日の食卓にもっと活躍させてください。