タネがないからパクパク食べやすいバナナ。でも、バナナにタネがないのはなぜだろう? タネがないのにどうやって増えるのかな? そのヒミツを探りに、遠い昔の熱帯の森へタイムスリップしてみよう!
目次
バナナのタネはどこにある?
黄色い皮に包まれた、甘くて、おいしくて、栄養満点なバナナ。手で簡単に皮をむけて、タネがないからパクパク食べやすい。
でも、まてよ。果物なのにタネがないのは、考えてみるとフシギだ。リンゴにも、モモにも、メロンにだってタネはある。
どうしてバナナにはタネがないんだろう? タネがないのに、バナナはどうやって増えるのかな?
大昔のバナナの皮をむいてみると…
ナゾの手がかりは、遠い昔の熱帯地方の森の中にある。
見上げたさきに実っているのは、「ムサアクミナタ」と呼ばれる野生のバナナだ。
試しに1本ちぎって、皮をむいてよう。
わ! あずきくらいの大きさのタネがぎっしり詰まっているよ。
ムサアクミナタは、わたしたちがふだん食べている甘いバナナのご先祖さま。太古の昔のバナナにはちゃんとタネがあったんだ。
今でも野生のバナナにはタネがあるものもあって、なかには1つの実に200個以上のタネが詰まっているものもあるんだって。
ある日、バナナに異変がおきた!
じゃあ、わたしたちがよく知るバナナには、どうしてタネがないんだろう?
きみは「突然変異」という言葉を聞いたことある? 遺伝子*や染色体*に異常が起こり、生物の性質が突然変化する現象だ。
その突然変異が大昔のある日にバナナに起きて、たまたまタネが成長しないバナナができてしまった。
食べてみると、タネがないからとても食べやすい。「これはいい!」と、わたしたちの祖先はタネのないバナナだけを集めて、家のまわりに植えて栽培を始めた。そして実が大きく、甘くなるように改良を加えていったんだ。
一説によれば、わたしたち人間は紀元前5000年より前には、すでにタネのないバナナを栽培していたそうだ。
*遺伝子…生物の性質を決める設計図のようなもの
*染色体…遺伝子の集合体のこと
タネのないバナナはこうして増える
しかし、きみはフシギに思うかもしれない。バナナにはタネがないのに、どうやったら増やせるのだろう?
ヒントはバナナ畑にある。ここはフィリピンにあるDoleのバナナ農園だ。
前に、バナナが木ではなく巨大な草であるという話をしたね。おぼえているかな?
その巨大なバナナの草の根元を見てみると…。ほら、そばで小さな芽が地面から顔を出しているよ。
これはバナナの子株。土の中にある親株の根っこから、こうして子株がつぎつぎに生えてくる。だからタネがなくとも増やしていける。この栽培法を「株分け」と言うんだよ。
別の場所に植えられた子株は、だんだん大きくなって、1年くらい経つと3m~8mくらいの高さになり、バナナの実をつける。
ちなみに子株は、突然変異が起きない限り、親株と同じ性質を受け継ぐ。タネのないバナナの実をつけた親株からは、同じようにタネなしバナナを実らせる子株が生えてくるんだ。
タネのなごりをたしかめよう
実は、わたしたちがいつも食べているバナナにも、その昔タネが存在していたことがわかる証拠があるんだ。
バナナを縦にふたつに切ってみよう。中央に小さな黒い点々が並んでいるのがわかるかな?
これが、バナナのタネのなごり。成長しなかったタネのあとだ。
はじめは森のなかで、たまたまできたタネのないバナナ。それを人間が株分けという方法で増やしていき、手を加えることで、甘くて美味しいタネなしバナナを一年中栽培できるようになった。
バナナがモグモグパクパクと食べやすくておいしいのは、タネがたどってきた長い時間と人間の知恵がもたらした結果だったんだ。
※記事の情報は2024年11月26日時点のものです。