エルヴィス・プレスリーが愛して止まなかったおふくろの味「エルヴィスサンド」。その伝説のレシピを、ロカビリー歌手で全日本エルヴィス・プレスリー普及委員会会長のビリー諸川さんが伝授! エルヴィスサンドの知られざる誕生エピソードもご紹介します。
この方に教えていただきました!
ビリー諸川(びりーもろかわ)さん
ロカビリー歌手、タレント、全日本エルヴィス・プレスリー普及委員会会長、『CAFE LOVE ME TENDER』オーナー。1957年東京・大田区生まれ。高校生のときにテレビで深夜に観た映画『フロリダ万才』でエルヴィス・プレスリーと遭遇、憧れの存在となる。1977年カントリー・ミュージシャンのジミー時田氏に弟子入り。1988年音楽評論家の湯川れい子氏に認められ、メンフィスのサン・スタジオでエルヴィス・プレスリーのバッキングメンバーたちとレコーディング。翌年1月メジャー・デビュー。現在は司会者、ライターとしても活躍している。
目次
「エルヴィスサンド」とは? 発祥はどこ?
―まず「エルヴィスサンド」がどんな食べ物か教えてください。アメリカではよく知られた料理なんですか?
「エルヴィスサンド」って、もともとは「ピーナツバターバナナサンドイッチ」というアメリカ南部の料理なんですよ。パンにたっぷりのピーナッツバターとソテーしたバナナ、ベーコンを挟んだサンドイッチで、現地の人にとっては故郷の味です。
―そのサンドイッチが、後に「エルヴィスサンド」と呼ばれるように?
そうです。エルヴィスだけが特別に作って食べていたんじゃなくて、もともとあった南部の料理なんです。でもエルヴィス・プレスリーの大好物ということで、一気にアメリカ全土でポピュラーになった。彼が有名にしたサンドイッチなので「エルヴィスサンド」と呼ばれるようになり、今や世界中で食べられるようになったんです。
―ピーナッツバターにバナナ、ベーコンをパンに挟むとは、日本人にはなかなか思いつかない組み合わせですね。カロリーもすごそうです。
おまけにサンドしたパンをたっぷりのバターで焼くんですよ。中には砂糖をかけて食べる人もいて。そういうのがいかにもアメリカっぽいでしょ? 食事というより、デザート感覚の料理なんですね。
スーパースターのエルヴィスサンド偏愛エピソード
―エルヴィス・プレスリーもアメリカ南部のメンフィスで子ども時代を過ごしたそうですね。幼い頃から、このサンドイッチに馴染みがあったんでしょうか?
子どもの頃にエルヴィス・プレスリーのお母さん、グラディス・プレスリーが作ってくれて、彼はこのサンドイッチが大好物になったようです。彼のお父さんもお母さんも南部の生まれだから。エルヴィスにとっては、おふくろの味なんですね。
―歌手として売れるようになった後も、エルヴィスサンドを食べていたんですか?
それはもう。どこか遠くに美味しいエルヴィスサンドを出す店があると知れば、夜中でも自家用ジェット機で駆けつけたそうですよ(笑)。それくらい大好物だったみたいです。
―自家用ジェット機で! さすがスーパースターですね。エルヴィスサンドのどんなところが好きだったんでしょうか?
彼は性格も食の好みも、まるで子どもみたいというか、本当にピュアなんですよ。それはスーパースターになっても変わらなくて、大金持ちになっても、お母さんの作るピーナッツバターバナナサンドとかミートソース、ミートローフが何よりのごちそうだったようです。
―おふくろの味に勝るものはなし、なんですね。
そう。でもお母さんは残念なことに、エルヴィスが23歳のとき、46歳の若さで亡くなってしまったんです。それで、そのお母さんの味を忠実に再現したのが、メンフィスにあるエルヴィスの邸宅「グレイスランド」の専属シェフ、メアリー・ジェンキンスさん。エルヴィスは彼女の作るエルヴィスサンドが大好きで、朝でも夜中でもいつ彼が「食べたい!」と言ってもいいように、メアリーさんはバナナやベーコンを必ずスタンバイしていたそうですよ。
―ビリー諸川さんは、ご自身のお店『CAFE LOVE ME TENDER』でエルヴィスサンドを提供されているそうですね。レシピはどこから?
メアリー・ジェンキンスさんのレシピブックをベースにしています。パンだけ日本の方が好むふっくら食パンを使用していますけど。だから、うちのレシピはかなり“エルヴィスのおふくろの味”に近いと思いますよ。きっと、エルヴィスもうちに来たら喜ぶんじゃないかな!
エルヴィスサンドにバナナが欠かせない意外な理由
―エルヴィスサンドに挟むのは、ピーナッツバターとバナナ、ベーコンと教えていただきましたが、バナナは材料として欠かせないものなんでしょうか?
もちろん。バナナが主役と言ってもいいくらい、ソテーしたバナナの甘みが大切なんです。バナナが入ることでボリュームも出るし。あとエルヴィスにとって、バナナは安心感につながる存在だったのかもしれない。
―バナナが安心感に?
エルヴィスが子どもの頃、一家はすごく貧しかったんですよ。栄養失調気味のときもあって、人から施しを受けるくらい。そして当時は今と違って、バナナが高級品だったわけです。だから、これは僕の想像なんだけど、彼はエルヴィスサンドをいつも食べられたわけではなかったと思うんです。子どもの頃のエルヴィスにとっては、憧れの食べ物だった。しかも愛するお母さんが自分のために、栄養豊富なバナナを頑張って手に入れて作ってくれるわけでしょ。
―幸せの象徴みたいなものだったんですね。
そう。エルヴィスサンドは、彼にとってアメリカンドリームの1つだった。だからスターになっていっぱい食べたんだと思うんですね。四六時中食べられることが嬉しくて。そして食べながらお母さんのことを思い出して、心も安心していたんじゃないかな。ただお腹を満たすだけじゃなくて、心まで満たしてくれる味。それが彼にとってのエルヴィスサンドだったんでしょうね。
―ではビリーさん。お腹も心も満たしてくれるエルヴィスサンドのレシピ、教えてください!
エルヴィスサンドの材料
材料(1人分)
バター…大さじ3
ピーナッツバター(粒あり)…大さじ3
バナナ…1本
ベーコン(ハーフサイズ)…2枚
食パン(6~8枚切り)…2枚
グラニュー糖…適宜
バナナはソテーするので、完熟手前のやや硬めのものを選ぶのがおすすめ。
うちの店では塩味をプラスするために、「ワサビリー」というワサビベースのオリジナル調味料を隠し味に加えていますが、なくてもOKです。
エルヴィスサンドの作り方
①バナナの皮を剝き、カットする
バナナは皮を剝き、縦半分に切り、さらに横半分に切ります。
②バターでベーコンとバナナをソテーする
熱したフライパンに半量のバターを溶かし、ベーコンとバナナを焼き色が付くまでソテーします。
言い伝えによると、エルヴィスはベーコンを焦げるくらいまでカリカリに焼いて塩味を凝縮させるのが好きだったそう。
③トーストしたパンにピーナッツバターを塗る
食パン2枚は軽くトーストし、そのうち1枚の片面にピーナッツバターをたっぷり塗ります。
④ベーコンとバナナを挟んでサンドする
ピーナッツバターを塗った食パンにソテーしたベーコンとバナナをのせて、もう一枚の食パンでサンドします。
⑤バターでパンの表面を焼く
フライパンに残り半量のバターを溶かし、サンドした食パンの表面をきつね色になるまで焼きます。
バターはケチらず、たっぷり使うのが美味しさの秘訣!
⑥「エルヴィスサンド」のできあがり!
半分にカットして皿に盛り付け、お好みでグラニュー糖を振りかけて召し上がれ! 冷めても美味しく食べられますよ。
【おまけ】ビリー諸川さんが選ぶ! エルヴィスサンドを食べながら聴きたい一曲
Elvis Presley-Mama liked the roses.
「Mama liked the roses(思い出のバラ)」は、エルヴィス・プレスリーが大好きな母親のことを思い出しながら歌った曲。エルヴィスサンドを食べながら聴くと、歌詞が心に沁みるー!
■エルヴィスサンドが食べられるお店
『CAFE LOVE ME TENDER』
東京都文京区向丘2-8-4 1F-C
TEL:070-8504-4858
営業時間:11:00 – 20:00
定休日:火曜日
※記事の情報は2024年11月15日時点のものです。