世界的なプログラマーであり、「Windows 95を設計した伝説の日本人」として知られている中島聡さん。2018年に中島さんが中心となって設立した一般社団法人シンギュラリティ・ソサエティでは、AIや最新テクノロジーを活用して社会の変革を牽引する新世代のリーダーの育成に注力しています。「エンジニアにとって手軽に栄養補給ができるバナナは頼りになる存在」と言う中島さんに、バナナの魅力を語っていただきました。
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中島さんは、高校時代からパソコン雑誌での記事執筆やソフトウェアの開発に携わり、大学時代には世界初のパソコン用製図・設計ソフト「CANDY」を開発しました。大学院を卒業した1985年にNTTの研究所に入所しますが、翌1986年に当時無名だったマイクロソフトの日本法人に転職します。1989年にマイクロソフトのアメリカ本社に移り、Windows 95とWebブラウザーのInternet Explorer 3.0/4.0を開発。現在、私たちが使っているパソコンの「右クリック」「ドラッグ&ドロップ」などの機能を実装し、世界中のパソコンユーザーに恩恵をもたらしました。2000年にマイクロソフトを退社して起業してからも、プログラマー、経営者、サイエンス・ライターとして幅広く活躍されています。現在は、1年間のほとんどをハワイとシアトルで過ごし、日本を含めた3拠点を飛び回りながら活動しているそうです。
健康の秘訣は、早寝、早起き、腹八分に、運動をすること
─長らくアメリカを中心に生活されている中島さんですが、バナナはどのような時に食べているのでしょうか?
家のキッチンにはいつもバナナが置いてあって、昼と夜の間など小腹が空いた時に食べている感じですね。果物は全般的に好きですが、1年の半分くらいを過ごすハワイでは、毎朝パパイヤを食べています。ただ、パパイヤはナイフで皮をむいたり、種を取ったり、切り分けたりする必要があります。その点、バナナは手で皮をむくだけで、手を汚さずに食べられるのがいいですね。
─中島さんは、あるインタビューで「三度の飯よりプログラムを書くことが好き」と答えていらっしゃいました。お忙しい毎日を過ごされていると思いますが、よい仕事をするために健康面で気を付けていることはありますか?
早寝、早起き、腹八分に、運動をすることです。夜は21時30分には寝て、朝は4時30分に起きています。朝ご飯は6時に食べて、お昼ご飯は12時、夕ご飯は18時と、規則正しく腹八分に抑えるのが基本です。そしてなるべく毎日運動をする。シンプルですが、効果的な健康法だと思います。
Profile
中島 聡(なかじま さとし)エンジニア・起業家・エンジェル投資家。1960年、北海道生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。大学院修了後、NTTの研究所に入所。1986年、マイクロソフトの日本法人に転職。1989年、米国マイクロソフト本社に移り、ソフトウェアアーキテクトとしてWindows 95の開発などを担当。2000年にマイクロソフトを退社。ソフトウェア会社Xevo(旧UIEvolution)を設立し、2019年に売却。現在シンギュラリティ・ソサエティ代表を務めるかたわら、プログラマー、ライターとしてメルマガ「週刊Life is beautiful」を発行。 X(旧Twitter)@snakajima
─ご著書の中で仕事に取り掛かる際は最初の2割の時間で仕事の8割を終わらせるという「ロケットスタート時間術」について解説されている中島さんだけに、朝からエンジン全開なんですね。スポーツは何をやられているのですか?
ハワイにいる時は、ゴルフと海での泳ぎです。最近は「パドルボード」といって、サーフボードの上に立って、パドルを漕ぎながら水面を進んでいくスポーツにもはまっています。シアトルではゴルフとプールでの泳ぎが中心で、時々テニスといったところですね。
─スポーツをする時、栄養補給でバナナを食べることはありますか?
ゴルフに行く時はバナナを持っていきますよ。バナナはゴルフバッグに入れて気軽に持ち歩けますし、ポケットにも入るから携帯性に優れているんですね。皮が包装紙の代わりをしてくれているので、わざわざビニール袋に入れて持ち歩く必要もないし。食べた後の皮も自然に還るわけですから、究極のエコですよね。
─確かに「皮が包装紙代わり」というのは新しい視点です。中島さんは食にもこだわりがあり、家では料理もすると伺っていますが、どんなものを作られるのですか?
牛丼、親子丼、スパゲッティボンゴレ、この3つは家族の中で私が作る担当になっています。牛丼はこれまで何百回も作ってきたので、完全にマスターしました。スパゲッティボンゴレも完璧です。この2つは外のレストランで食べるより、自分で作ったほうが断然美味しい。やはりそのレベルまで達しないと完璧とはいえませんね。ただ、親子丼だけは難しくて、まだ美味しいお店には適わないのですが、いつかは超えてみせます。
ひと皮むけたのは、アメリカの文化が理解できた時
─エンジニアとしてだけでなく、人材育成や文筆業の分野でも活躍されている中島さんですが、これまでを振り返って「ひと皮むけた瞬間」はありましたか?
アメリカに渡って10年くらい経ってからですね。英語がまったくしゃべれないまま行ったので、最初は日米の文化の違いに戸惑いました。例えば、日本ではコンビニでもファミレスでも店員さんとは事務的なことしか話しませんよね。ところがアメリカではファーストネームで呼んだり、ちょっとした会話をしたりするのが基本なんです。それが当たり前のカルチャーであり、話しかけないと失礼に当たります。
そんな会話が自然にできるまで10年近くかかり、その時に「ひと皮むけた」、「アメリカ社会の一員になれた」という気がしました。ビジネスの現場でも同様で、ミーティングの最初に一言交わすことが交渉の場でも役に立つんです。その感覚がつかめるかつかめないかで大きく変わります。
AI時代に備えて人材を育成し、新たなサービスを生み出す
中島さんは2011年からメールマガジン「週刊Life is beautiful」の配信を開始し、エンジニア向け、起業家予備軍向けに、最新テクノロジーの話題から世界に通用するエンジニアになるための勉強法、起業する時に知っておくべきことなどを発信し続けています。2016年頃にはホリエモンこと堀江貴文氏の薦めで双方向の「オンラインサロン」の開設を検討し、2018年に非営利団体(NPO)としてシンギュラリティ・ソサエティを立ち上げました。シンギュラリティ・ソサエティは、AIやテクノロジーが人間の能力を超越する時代を見据えて、その波をリードする人材を育成することを使命としています。活動として、大学、自治体、企業と連携して次世代のモビリティサービス、AIアプリ、ブロックチェーン技術を用いたWeb3の問題点を克服するための実験的サービスなど、独自のプロダクトを開発・運営しています。また、人材育成やコミュニケーション活動の一環として、オンラインでの短期開発のハッカソン*、半年間の長期型ハッカソン「BootCamp」、オンライン読書会などを開催しています。
*ハッカソン:プログラムの改良を意味するハック(hack)とマラソン(marathon)を組み合わせた造語。エンジニア、デザイナー、プログラマーなどが集まり、特定のテーマについて集中的に開発しながら、その成果を競うイベント。
─中島さんがシンギュラリティ・ソサエティを設立した狙いをお聞かせください。
設立を考えた頃は、現在ほどAIは盛り上がっていませんでした。しかしエンジニアとしては、当時からAIによって世の中が激変することは見えていて、ビジネスチャンスが到来することは予測できました。AIによって働き方やライフスタイルが大きく変わるのであれば、今から何を準備するべきかを考えたり、どういったプロダクトやサービスを作るべきかを考えたりする必要がある。そのために設立したのがシンギュラリティ・ソサエティです。
例えば、現在は一般の会社員が、企業の中でAIに取り組もうとすると、ビジネスとしての成功が求められます。AIスタートアップ・ベンチャーを立ち上げた起業家も、投資家から資金を集めるとなると短期間で利益を上げる必要があります。しかし、AIに関しては関連領域がかなり広いため、短期間に成果を出そうとすると、可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。そこで、「まずは私が場所を作るから、みなさんで勉強してみましょう」というスタンスで運営しています。勉強を続ける中で、チャンスがあれば自身でプロダクトやサービスを作ってもいいですし、新しい会社を立ち上げてもいい。
ですから、シンギュラリティ・ソサエティでは、参加者がどんなプロダクトを作りたいかを考えて、「プロトタイプ(試作品)を作ってみたから見てください」といった発表をしたり、「こんなアイデアがあるのですが、どう思いますか」という議論をしたりと、気が合う人たちが集まって実際のプロジェクトにつなげることを目指しています。
─数ある活動の中で、半年間の長期型ハッカソン「BootCamp」にはどのような方が集まっているのですか?
参加者はエンジニアが多いですね。それぞれ仕事を持っている中で、先行きに不安を抱いている方も多く、職場以外の環境でAIの勉強をしたい、仲間を作りたいといった目的で参加してくれているようです。
─2024年5月に始まった今年のBootCampは、2023年に続いて2回目ということですが、1回目の手応えがあったんですね。
そうです。サロン形式だけだと、どうしても「傍観者」のような方が出てきてしまいますし、区切りがないと緊張感に欠ける部分もあります。BootCampのように、6カ月という期間を区切ってやることは非常に有効で、1回目の2023年は新しいサービスがいくつか生まれましたし、新しいAIスタートアップ・ベンチャーも2~3社できて手応えがありました。
─BootCampにおける中島さんは、参加者をサポートする立場ですか?
そうですが、私自身が作っているプログラムのプロトタイプを見せたり、こんなサービスがあればいいといったアイデアを出したりもしています。
─中島さんの来日にあわせて2024年6月に開催されたBootCampのオフラインイベントでは、Doleから参加者のみなさんにバナナを提供させていただきました。
常に頭脳を使っているエンジニアの方にとって、仕事中の糖分補給としてバナナという選択肢はありでしょうか?
エンジニアは仕事中におやつを食べることがよくありますが、栄養面から考えるとスナック菓子のようなジャンクフードより、バナナがいいと思います。糖分の摂り過ぎを抑えられるのもいいんですよ。私自身、以前は毎朝、生のフルーツを搾ったジュースを飲んでいたのですが、ある時フルーツジュースは急激に血糖値を上げる「血糖値スパイク」が発生しやすく、血管によくないということを知りました。それ以来、朝のフルーツジュースはやめましたし、砂糖が含まれる清涼飲料水も飲みません。バナナなら咀嚼しながらゆっくり糖分が摂取できますし、血糖値スパイクの不安もないので安心です。
仕事や勉強がはかどらない、やる気が出ない。それは、脳の活性化に必要な糖質が切れているサインかもしれません。バナナには素早く脳のエネルギーになるブドウ糖がたっぷり含まれています。ブドウ糖だけでなく、果糖やショ糖、でんぷんなど多種類の糖が含まれ、それぞれ消化吸収スピードが異なるため、持続的に脳にエネルギーを供給することができるのです。また、バナナに多く含まれているアミノ酸のトリプトファンにも脳の働きを活性化する作用があり、ストレスの軽減に効果的であることもわかっています。片手で食べられ、消化に負担がかからないバナナは、手っ取り早く集中力を高めたい時にぴったりのフルーツです。
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「炎上」を恐れずアウトプットし続けることが大切
─BootCampで参加者が取り組んでおられるように、アイデアを生み出し、それをアウトプットするための極意があればぜひ教えてください。
まずは間違ってもいいということ、怖がらないことが第一です。私もメールマガジンやXを通して自分の考えを発信していますが、インターネット上の発言に対して「炎上」することもあります。しかし、それを怖がっていてはアウトプットなんてできません。アウトプットのメリットは、それによって新しい情報が得られることです。マイナスよりプラスが大きいので、私自身は批判を恐れずアウトプットすることを心掛けています。
テーマが見つからないという人は、自分が夢中になれること、心地よいものを探すことから始めてみてはいかがでしょうか。私自身、模索しながら行き着いたのがメールマガジンでの発信であり、今や心地よいリズムになっています。
─なるほど。中島さんの著作を拝見していても、自分が夢中になれるもの、好きなものを見つけることが仕事にもアウトプットにもつながるということが伝わってきます。
そうですね。夢中になれるものを見つけ、時間を忘れて没頭するためにも、手軽で健康にいいバナナは食べ続けたいですね。
※記事の情報は2024年8月13日時点のものです。