Dole

世界を明るいDole色に染めていきたい|株式会社ドール社長インタビュー

2023年7月、株式会社ドール(Dole Japan,Inc.)は日本オリジナルの新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」を発表しました。そして、2023年11月、株式会社ドールの新社長に青木寛氏が就任。新社長、新ブランドメッセージのもと、さまざまな取り組みを展開する株式会社ドールについて、青木社長にお話を聞きました。

明るく楽しく。みんなの話題の中心に「Dole」を

―まずは、株式会社ドールの事業内容と歴史について教えてください。

Doleは1851年、ハワイで始まった会社です。社名の由来となったジェームス・ドールという人がハーバード大学で農業学と園芸学の学士号を取得してハワイに渡り、アメリカ本土向けのパイナップルの栽培を始めました。その後、バナナの栽培を始め、バナナが主力商品になりました。現在では、北米、南米、アジア、ヨーロッパなど世界90か国以上で、バナナやパイナップルを生産する青果物事業、フルーツや野菜の加工食品を製造する加工食品事業を展開しています。

日本市場に進出したのは1965年。主にバナナ、パイナップル、アボカドなどの青果物とパイナップルを中心とした缶詰やドライフルーツなどの加工品を取り扱っています。そして2013年、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠)が新設したDole International Holdings株式会社が、アジアにおける青果物事業と世界中の加工品事業を米国のDole Food Company, Inc.より取得しました。

―青木さんは2023年11月に株式会社ドール(Dole Japan, Inc.)社長に就任されたということですが、任命されたときの感想は?

私は大学卒業後、伊藤忠に入社し、自動車事業に携わる部門やコンビニエンスストア事業に携わる部門など、さまざまな部署で仕事をしてきましたが、実はパイナップル果汁を担当していた時期に何度か出張でフィリピンにあるDoleのパイナップル畑を訪れたことがありました。

初めてその壮大な景色を見た時の感動は今でも忘れられません。フィリピン、ミンダナオ島のポロモロックという約15万人規模の町なのですが、そこでは約2万人がDoleで働いていて、従業員の約8割が地元の出身だと聞きました。つまり従業員の家族も含めると町のほとんどの人がDole関係者なんです。そして、当時はDoleが建てた病院(現在は売却済み)や小学校があったんです。Doleはすごいなと思いました。

パイナップル畑

その頃から伊藤忠がDoleビジネスをやっていく中で、いつか重要なポジションで仕事をしたいなと思っていました。ですから、今回の社長就任は急な話で正直なところ驚きはあったのですが、「そういうことになっていたんだな」とすっと受け入れることができたんです。

―社長就任前と就任後で、Doleという企業に対してのイメージの変化などはありましたか?

実は、アジアの青果物事業が伊藤忠傘下の新会社に移った2013年、過去40年間来ていなかった台風がフィリピンのバナナ畑を直撃しました。以降10年間、多大なダメージからの回復を図りつつも、思ったように利益を上げることができず、Dole社員のみなさんは大変な苦労をしてきました。

2022年、大きな損失が出た翌年に私が社長に就任しましたので、「ここでV字回復を!」と意気込んでいたのですが、その後も続く気候変動、為替の変動による円安、世界的なエネルギーコストの上昇など、予想以上に厳しい状況に置かれていることが分かりました。でもだからこそ、Doleを盛り上げて明るく前向きにしたい。それが、私が社長に就任にして最初に思ったことです。

-バナナをはじめとした青果物事業は厳しい状況に置かれているのですね。Doleを盛り上げて明るく前向きな会社にするために、青木社長が具体的に取り組んだことを教えてください。

Doleの社員は真面目な人が多いんです。一生懸命愚直にバナナやパイナップルを売ってきたというのは本当によく分かります。でも少し従来の枠にとらわれているのではないかとも感じました。だから私は「枠枠」を「ワクワク」に変えていきたいと思ったんです。

社長に就任して1か月後に、ノーネクタイ、TシャツOKにしました。同時に在宅ワークに関しても柔軟に対応できるようにしました。やはり若い世代の社員が働きやすい環境にすることは、会社の今後を考える上で重要なことです。

また、価値のある取り組みを伝えていくことができる仕組みづくりも大事だと思っています。Doleは確立したブランドなので、これまでは広報の必要性があまりなかったのかもしれません。今後は他社とのコラボ企画や他ブランドとのタイアップなど、生活者のみなさんにも届く楽しい仕掛けをいろいろ考えていきたいので、それを積極的に発信していき、共感していただけるファンを増やしていきたいと思っています。伝え方も、担当のみなさんが積極的にアイデアを出してさまざまなやり方にチャレンジしていけるようにしていきたいと考えています。

「Doleと一緒に何かしたい」と思ってもらえる会社になるよう、まずは社員のみなさんが楽しんで仕事に向き合える環境づくりに取り組んでいます。「逆境をバネに、明るく楽しく。みんなの話題の中心にDoleを持ってきて盛り上がっていこうぜ!」というマインドに変えていきたいです。

インタビューに応える青木寛さん

Profile
青木 寛(あおき ひろし)1993年、早稲田大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。2000年、食料カンパニーに異動し、果汁・果実加工品のトレードを担当。ドール、ファミリーマートでビジネス開発・商品開発などに従事した後、2019年伊藤忠商事リテール開発部長、2023年11月ドール代表取締役社長CEOに就任。

―社長就任後、青木さんご自身の実生活のなかでフルーツとの付き合い方に何か変化はありましたか?

伊藤忠からの出向で果汁を担当していた頃はフルーツをよく食べていました。バナナピューレを担当した時は毎日バナナを食べていましたし、パイナップルを担当した時は、自分でパイナップルを解体してどこに果汁が一番多く含まれているか知るためにしぼってみたり(笑)。

それからしばらくフルーツとは少し距離ができていたのですが、社長就任以降、毎日1、2本、バナナを食べています。実感するのはお腹の調子のよさですね。当社では「バナ活®」と謳っていますが、バナナにはレジスタントスターチ(難消化性デンプン)が含まれているため、食物繊維を摂った時と同じように腸内環境を整える効果が期待できるんです。

バナ活

機能面ばかりではなく、当社の「スウィーティオバナナ」、「極撰バナナ」といったハイランドバナナの美味しさを改めて実感しています。

※ハイランドバナナ…高地栽培により糖度を高めたバナナの総称

生活者の笑顔と健康を支えてゆくために

―2023年7月、株式会社ドール(Dole Japan,Inc.)は日本オリジナルの新ブランドメッセージ「フルーツでスマイルを。」を発表しました。このメッセージにはどんな意味が込められているのでしょうか? 

Doleの世界的なブランドメッセージは“Sunshine For All”です。サンシャイン、太陽、明るい、まさに生活者のみなさんがDoleに抱くイメージそのものだと思います。これを日本のみなさんにより伝えやすくするために、社員が一生懸命考えたのが「フルーツでスマイルを。」です。

フルーツでスマイルを。

このブランドメッセージが制作されたのは私の社長就任前のことですが、フルーツの「おいしさ」「健康/美容効果」「エシカル消費」を通じて、人々の暮らしを笑顔にし、支えていきたいという思いが込められています。
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先ほどもお話したように、生産地では再生計画を立てて一丸となって頑張っている。社内ではやりたいことが実行できるような組織風土に変わりつつある。生活者のみなさんに笑顔になってもらうためには、まずは生産地が、社員が笑顔にならないといけない。すぐには難しくとも自分たちが笑顔になれることを、また生活者のみなさんに笑顔になってもらえることを意識してやりましょう、ということだと私は理解しています。

―フルーツを取り巻く環境におけるDoleの使命について教えてください。

私たちの第一の使命は、マーケットリーダーであることです。バナナやパイナップルは一般生活者のみなさんに食べていただける商品でなくてはならない。と同時に、その価値を実感していただき、その価値に見合った価格としてご納得いただける商品に引き上げていかなくてはいけないと思っています。

日本のバナナ輸入量は年間約100万tで推移しています。青果売り場の中でバナナが占める割合は金額ベースで約17%、点数ベースだと約28%。生鮮売り場全体からしても高い割合を占めるバナナは、日本人にとって非常に重要なフルーツ、食べ物であることが分かります。

国産のミカンは2003年には約115万tの生産量があったのですが、2022年には約68万tにまで減っています。国産の青果に関しては人手不足の問題もあり、今後生産量が回復するとは考えにくい状態です。このような状況下において、今後、バナナやパイナップル、キウイなどの輸入果物が日本人のフルーツ摂取量の増加、ひいては日本人の健康を担う使命があります。

青木社長インタビューカット

一方で2050年食糧問題として、カカオを原料とするチョコレートやバナナなどもこのままでは価格的にも収量的にも食べられなくなるのでは?と懸念されています。今後も安定的に供給していくためには、生産地のメンテナンス、持続可能な経済活動が必要不可欠です。

2022年、フィリピン政府から「バナナの値上げにご協力を」という異例の要請があったことを受け、当社では約5,000人を対象に、バナナの生産、輸送工程などをご説明した上での適正価格アンケートを取りました。結果は1本109.8円でした。まだまだ「バナナは安いもの」という認識がある日本において、生産地にしっかりと還元でき、かつ、生活者のみなさんが手に取ることができる適正価格を探り、提示し、浸透させていく使命が我々にはあると思っています。

また、フルーツロス削減を掲げた「もったいないバナナ」プロジェクトを立ち上げました。「もったいないバナナ」はジューススタンドから始まり、今ではさまざまな加工商品にも拡がりを見せています。

もったいないバナナ

フルーツを主役にした、楽しい“ワクワク”を発信していきたい

―7月23日にDoleの公式Webサイトがリニューアルしました。今後、青木社長はどのようなことを発信していきたいと考えていますか?

「Doleが気になる」と思っていただいた時、ここにくればDoleに関する情報がきちんと整理されていて、かつ、おもしろい読み物が掲載されている。そんなサイトにしていきたいと考えています。つまり情報の発信基地ですね。

例えば、「バナナを食べると腸や体にいいですよ」「パイナップルはお肌にいいですよ」「バナナは腹持ちがいいのでスポーツにも最適です」などといった、みなさんにぜひお知らせしたい果物の魅力について、科学的エビデンス+周辺情報によって、興味を持っていただく記事を掲載していきたいですね。

それから、先ほどの「もったいないバナナ」プロジェクトや、例えばJリーグの選手をはじめ、キッズ、ジュニアのサッカーチームにもバナナやパイナップルなどを提供し、健康面でサポートを行っている取り組み、全国の6,700名以上の幼稚園児(約150園)への食育プログラム、小学校低学年向けに無償で行われる体育支援サービス「カラチャレ」への協賛など、企業としての社会貢献活動もご紹介していきたいと思っています。

私は社長に就任して以来、自らがアンバサダーとなって、バナナやパイナップルの美味しさ、楽しさを広めて回っているんです(笑)。知人にバナナを贈り「バナナポーズ」の写真を送ってもらったり、友人宅に呼ばれた時には丸ごとパイナップルとスクゥイーザーを持参してしぼりたてパイナップルジュースを飲んでもらったり。焼肉店に行った時は、お店の方に許可を取って、お客様全員に焼きパイナップルをご賞味いただいたこともありました。また、生産地で廃棄処分になるバナナを炭にし、土壌改良剤に使っていると知り、バナナ炭をBBQに使えないかと実証実験を行ったりもしました。

このようなフルーツを主役にした話題作り、楽しいワクワクの発信も行っていきたいですね。

-青木社長ご自身がDoleという会社で「これだけは成し遂げたい」と思っていることはどんなことですか?

Doleの日本でのシェア拡大、業績のV字回復、そして、先ほどから申し上げている通り、Doleで働いている人が活気と笑顔にあふれ、それが周囲に伝わって、「Doleと一緒に何かしたい」と思わせるような会社にすることです。

―最後に青木社長から読者のみなさまへメッセージをお願いいたします。

Doleのフルーツを買って食べてもらうと、みんなが明るく楽しくなるような世界を作っていきたいと思っています。黄色、赤、青、緑。世界を明るいDole色に染めたいと本気で思っています。ぜひ、これからのDoleにご期待ください!

青木社長とドールのマスコットキャラクター・スウィーティオ

※記事の情報は2024年7月23日時点のものです。